趣味とインターネットの話

 親族の集まりに参加しなくてはならなくなったとき、近くにいた1つ違いの従兄と話をしていた。数年前に結婚をしている従兄に、友達はみんな結婚しているのかを聞いてみた。僕は友達がほとんどいないし、だいたい結婚していない。「自分たちは早く結婚したけど、ここ1,2年で結婚し始めるようになった」と言っていた。

 音楽や映画の話が出来る従兄なので、学生時代に付き合いのあった人たちは僕と同じような人たちなんだろうと思ったのだけど、どうやらサークルには入っていなくて、同じ授業で友達になった人、その人の友達、と芋づる式で友達が出来たようだ。「同じ趣味の人と友達になるのは難しいよ」というので、僕は同じ趣味を持つ人としか話せないから、大学でいまでも連絡が取れるのはお世話になった先生しかいないと話したら笑っていた。

 僕は10年以上、インターネットで、同じような趣味を持つ人たちとしか知り合ってこなかった。付き合った人もほとんどがインターネットがきっかけだ。中には作家になった人もいるし、研究者になった人もいれば、編集者やライターとして活躍している人もいる。疎遠になった人もいるし、すっかり忘れてしまった人だっているし、死んでしまった人もいる。

 前にインターネットで知り合った人が「趣味で繋がったインターネットの人と、気づいたら人生の話しかできなくなってしまった」と言っていた。趣味が趣味のままでいられるのはたいへんだし、移り行くものだし、同じ分野でも範囲が違っていくものでもある。だから人生の話しかできなくなってしまうということだと思う。

 仕事でお世話になった人が、ファッションでもなんでも無駄なことをたくさんしてセンスを磨いていくものだという話をしていた記憶がある。だからお金は大事なんだよ、と。お金だけじゃなくて、余裕もなくなれば趣味も続かなくなるんだと思う。そして余裕のない人間は余裕を作ることもできなくなって、ただつらく、何もなくなっていくんだと思う。